アニメ『やがて君になる』5話感想まとめ 〜演出論のような何か〜
アニメ『やがて君になる』5話視聴。トロイカ常連の(というかトロイカ以前のあおきえい作品常連の)林宏樹氏コンテ回。林氏と言えば、『レクリエイターズ』8話で静謐でありながらも激烈な問答を描ききったことが強く印象に残っているが、果たしてこの『やが君』ではどんなコンテを切ってくるのか。
— パンナコッタ (@yuridake2018) 2018年11月3日
Aパート冒頭、生徒会がない間に先輩と会ったりしないと侑さんに言われた槙くんは、「えー? なんで」となにやら残念そう。そのリアクションに対する侑さんの応答は、原作にあっては「いや付き合ってないからね?」というかなり強めの否定だった。
— パンナコッタ (@yuridake2018) 2018年11月3日
一方、アニメ版では「だから……付き合ってない……」とだいぶ弱々しい感じ。台詞だけでなく、「だから」と「付き合ってない」の間で槙くんから顔を逸したのもポイントと思う。
— パンナコッタ (@yuridake2018) 2018年11月3日
このエピソードで、侑さんは「小糸さんもちゃんと七海先輩のこと好きなんだね」という槙くんの思いがけない言葉について考えることになる。そんな「考え中」であることの表現として、強めの否定でなく弱々しい否定でおさめる改変は実に理にかなったものかと。
— パンナコッタ (@yuridake2018) 2018年11月3日
で、次がその肝心の思考シーン。ここで侑さんは「やっぱり違う」「相手が七海先輩じゃなくても」という結論に至る。侑さんにとっては「特別」でなく「普通」なのだと。
— パンナコッタ (@yuridake2018) 2018年11月3日
「普通」とは「ごくありふれたものであること」という意味。アニメ版『やがて君になる』では、それを原作にはない「コケたモブを別のモブが助ける体育の授業風景」に焦点を当てることで表現してきた。そりゃあアニメにおいて、モブ以上にありふれてる度が高い存在なんてないもんねw
— パンナコッタ (@yuridake2018) 2018年11月3日
そんな結論を導き出した侑さんは、なんの因果か燈子さんと図書室で勉強会をすることになる。その帰り道、原作ではずっと歩きながらの会話だったが、アニメでは半分ほどが踏切の前で電車が通過するのを待ちながらの会話となった。
— パンナコッタ (@yuridake2018) 2018年11月3日
しかもその間はずっとFIXのロングショット。かなり大胆な改変だけど、これはもう今回のトロイカポイントと称して良いほどこのスタジオの得意技。ロングショットのトロイカと僕は密かに呼んでいる。
— パンナコッタ (@yuridake2018) 2018年11月3日
時が過ぎ、勉強会が習慣化した頃。燈子さんは同学年の友人達からなにやらお誘いを受けるが、侑さんとの勉強会を優先して丁重にお断りする。その後、近くで待機していた侑さんとすぐ合流して並んで歩き出すのだが、ここはカメラの位置がもの凄く重要で。
— パンナコッタ (@yuridake2018) 2018年11月3日
「小糸さんといるのがいい」。ここでカメラは並んで歩く二人の間に移動する。まず最初に映したのは発言の主たる燈子さん。そして次に、そのまま振り返って侑さんを映し出す。するとあらびっくり、「二人は同じ方向に歩いているはずなのに画面上は別々の方向を向いている」という構図ができあがる。
— パンナコッタ (@yuridake2018) 2018年11月3日
『やが君』前半は、「好きを知った七海燈子」と「好きを知ることができない小糸侑」という対比をなす二人が、それでも、いやそれ故に共にい続ける物語。そのことを表現する上で、これ以上のものがあるだろうか。原作通りの要素ではあるが、アニメだと「歩く」という動作がより強調される利点がある。
— パンナコッタ (@yuridake2018) 2018年11月3日
さて、この至高のAパートだけで大満足な感があるが、そこはさすがのアニメ『やがて君になる』。Bパートも負けず劣らずの濃密さだった。
— パンナコッタ (@yuridake2018) 2018年11月3日
図書室がほぼ満員のため、勉強会の場所は急遽侑さんの部屋ということに。そうなると、侑さんのことが大好きな燈子さんはたじたじなわけだが、Aパートで描かれたように「先輩が特別でない」上にそもそも自分の家な侑さんは余裕綽々。それが2人の所作や声の芝居などでよく表現されていたと思う。
— パンナコッタ (@yuridake2018) 2018年11月3日
原作にない要素で特に良かったのは、侑さんに近づかれた燈子さんが少しだけ右手を引いた所。内心、「やばい触れそう、やばい触れそう」みたいに考えてたんだろうかw
— パンナコッタ (@yuridake2018) 2018年11月3日
あまりに細かすぎる改変が多々ある本作だけど、Bパートのラストのそれは飛び抜けて細かいなと思う。プラネタリウムのスイッチを切るタイミングだが、原作では「選んでくれたら」の直前であるのに対して、アニメ版では「選んでくれたら」の後、つまりEDへの入りの直前も直前になっている。
— パンナコッタ (@yuridake2018) 2018年11月3日
原作漫画ではこのシーンで「1エピソード完」なので「選んでくれたら」を最後に持ってきた方が余韻も出るだろう。ただアニメでは最後にあの元気なEDが待っている。それを踏まえると、「カチッ」といスイッチの音でしめることの妥当性が見えてくると思う。いやそれにしても細かい。
— パンナコッタ (@yuridake2018) 2018年11月3日