アニメ『やがて君になる』7話感想まとめ 〜演出論のような何か〜
アニメ『やがて君になる』7話視聴。原作勢アニメ勢を問わず阿鼻叫喚の嵐を巻き起こしたあおきえいコンテ回から一週間が経過しての最新話。あれの後でどんなもん投げてくるんだ? と期待に胸膨らませていたが、やはりと言うべきか、トロイカはその期待のはるか上を悠然と通り過ぎていく。
— パンナコッタ (@yuridake2018) 2018年11月17日
アバンからして意味を重ねるトロイカの作劇が盛り沢山。先輩に告白される直前、沙弥香さんは画面の「左側から」やってきたが、時が過ぎ、振られるに至ったあの場面では「右側から」なんだ。
— パンナコッタ (@yuridake2018) 2018年11月17日
それも心底楽しそうに、あるいは嬉しそうに。「はじめはおかしいと思った」と自身が語った関係性は、その瞬間には「ないと寂しい」関係性に変わっていた。だから、先輩との時間がダイジェスト的に描かれた後、噴水が吹き上がる。
— パンナコッタ (@yuridake2018) 2018年11月17日
その点で、告白された時は二人とカメラの間に噴水を挟んでいたのに対して、振られた時は遮るものは何もなく、噴水が二人の後ろ側に配置されていたことも示唆的だ。沙弥香さんの心理は、この時すっかり変化していた。
— パンナコッタ (@yuridake2018) 2018年11月17日
そんな最強アバンを終えてのAパート。みんなに言えないことが増えていく侑さんは、ここでも苦労を抱える。燈子さん人柄を訊かれても、そりゃあ本当のことは言えないよね。
— パンナコッタ (@yuridake2018) 2018年11月17日
この場面、「隠し事をする後ろめたさ」を表現する王道手法である視線の動きも当然採用されてるんだけど、それだけで乗り切るにはちと長い。そこをなんとかしたのが足回りを中心に描いたカットで、侑さんの右足をすっと下げることで後ろめたさの表現にもなっている(こよみさんの動きも可愛い)。
— パンナコッタ (@yuridake2018) 2018年11月17日
さて場面は変わって、中心が今回の主役である沙弥香さんに戻ってくる。これは前回カットされたかに思われた原作のエピソードだが、順序が入れ替わり、そしてアニメ版流のアレンジが加えられての登場だ。
— パンナコッタ (@yuridake2018) 2018年11月17日
アニメ『やが君』お馴染みの「境界線」の演出。この作品が凄いのは、それが単に「二人の間には境界線がありますよ」と言うだけでなく人物の芝居そのものにも関わってくる所だ。
— パンナコッタ (@yuridake2018) 2018年11月17日
「あの子のどこをそんなに気に入ってるの?」。沙弥香にしては珍しく、燈子さんに対する踏み込みのような試みを見せる。しかしそこが限界のラインと判断したのか、それ以上は追求しない。故に、境界線(言うまでもなくそれは窓枠により表現された)に触れた右手をさりげなく引いたのだ。
— パンナコッタ (@yuridake2018) 2018年11月17日
喫茶店からの帰り道、侑さんによる「名前呼び」にたじたじな燈子さん。ここは燈子さんが一度耐えても再度攻める侑さんの意地の悪さが面白い場面だが、その演出がアニメはアニメで独自のものを出してきた。
— パンナコッタ (@yuridake2018) 2018年11月17日
原作では名前を呼ぶ侑さんと耐える燈子さんを交互に見せる構成だったが、アニメで映っているのはずっと燈子さん。その間カメラはじっとしているのでなく、じりじりと燈子さんに詰め寄っていく。やめたげてw
— パンナコッタ (@yuridake2018) 2018年11月17日
で、遂に理子先生&都さんの出番。ここはアニメ『やが君』の特色である「流れは原作に忠実に、演出はアニメ独自のものを」というスタンスがよく活きたシークエンスだったかと。
— パンナコッタ (@yuridake2018) 2018年11月17日
このシークエンスに関して原作読者は色々と知っているわけですが、原作未読者は様々に想像を巡らせながら見ることになりますよね。それを考えると、キスシーンを最初から直に見せずに足下から始めたことで生じる効果が分かってくる。つまり、「おや? やはりこの二人?」という緊張感だ。
— パンナコッタ (@yuridake2018) 2018年11月17日
原作未読者も意識した上で原作既読者もホクホクできる上記のような演出。これって良いアニメ化の型の一つだと僕は思うのだけど、アニメ『やがて君になる』はまさにそのモデルケースと言って良い。好きな作品がそうなることの喜びを噛み締めている。
— パンナコッタ (@yuridake2018) 2018年11月17日
さて、Aパートは沙弥香さんをメインとしつつ侑さんや燈子さんのターンもあったわけだが、Bパートは100%沙弥香さんのターン。グルグル思考を巡らせる沙弥香さんは、糸口を求めてか「おそらく理子先生と付き合っているんだろう店長さん」のもとへ赴く。
— パンナコッタ (@yuridake2018) 2018年11月17日
「コーヒーを飲む」という所作が原作以上に強調されたのが7話の特徴だが、ここでその意味が明らかになる。「だとしても、本当の気持ちを飲みこむのは大変なことだよ」。コーヒーとはすなわち、沙弥香さんの本当の気持ちのメタファーなんだ。
— パンナコッタ (@yuridake2018) 2018年11月17日
これまで一人でコーヒー=本当の気持ちを飲み込み続けてきた沙弥香さんは、空になったカップを見つめる。そんな沙弥香さんに、都さんはもう一杯のコーヒーを差し出し労いの言葉をかけた。それは、沙弥香さんがはじめて自分一人でなく誰かの助力を得て気持ちを飲み込んだ瞬間だったのだろう。
— パンナコッタ (@yuridake2018) 2018年11月17日