アニメ『やがて君になる』6話感想まとめ 〜演出論のような何か〜
アニメ『やがて君になる』6話視聴。トロイカのオタク達が待ちに待ったあおきえい氏のコンテ回だ。あおき氏と百合となると、自身の監督作『喰霊-零-』と各話コンテ担当の『ささめきこと』が有名だが、今回はその手腕がどのように振るわれるのか、おのずと注目される。
— パンナコッタ (@yuridake2018) 2018年11月10日
あおきえい節とでも言えば良いのか、氏の得意技がアバンからいきなり炸裂。「可愛いと思えるようになりたい」。そんな侑さんのモノローグの直後、カメラが生徒会室の外へ移動した。
— パンナコッタ (@yuridake2018) 2018年11月10日
そうして映し出されたのは、窓枠によって左右に分けられた侑さんと燈子さん。アニメ『やが君』ではもはやおなじみになった感のある「境界線」の演出だが、これはそもそもあおき氏のカラーで、まさに本家参上の趣である。
— パンナコッタ (@yuridake2018) 2018年11月10日
さて、OPが終わり本編Aパートが始まってもあおきえい節は止まらない。生徒会室から出ていく面々を撮るカメラの向きがなにやらおかしい。
— パンナコッタ (@yuridake2018) 2018年11月10日
普通なら水平に撮るだろう所、仰角を設けることで退屈になりかねない移動シーンに一工夫凝らす。提示されてしまえばなんてことのないことのように見えるが、こういう細かい工夫こそ作ってる側は大変だろうことは想像に難くない。
— パンナコッタ (@yuridake2018) 2018年11月10日
お次は先行カットの時点で話題になった「なんか横になってるカット」。あれだけであおき氏の頭のおかしさ、じゃない創造力の尋常ならざることが伝わるが、僕としてはその直前の流れを推したい。
— パンナコッタ (@yuridake2018) 2018年11月10日
「そうね。燈子ならいつも通り完璧にこなしてくれるでしょう」。侑さんに同意するかに見えた沙弥香さんは、この間侑さんの近くに移動する。ここでカメラは座ってる侑さんの頭を水平に映す形で配置されているので、途中から沙弥香さんの顔が画面の外に出ることに。ここがポイント。
— パンナコッタ (@yuridake2018) 2018年11月10日
結果として、「例の横になってるカット」で本性を出した沙弥香さんの表情が唐突に画面に現れることになる。それがまた侑さんにグイッと顔を近づけてるものだから、唐突さとの合わせ技で余計に迫力ある流れになったのだ。
— パンナコッタ (@yuridake2018) 2018年11月10日
侑さんと沙弥香さんの会話は続く。沙弥香さんが燈子さんについて語る中、カットバックとして燈子さんが生徒長の仕事をこなす様子も提示されるが、この2のシーンの繋ぎ方が上手いこと上手いこと。
— パンナコッタ (@yuridake2018) 2018年11月10日
画面の中心が燈子さんから沙弥香さんに切り替わる時、二人が丁度背中合わせになっているかのようにカメラが配置されてるんだ。「それでいい。そのままでいて。そのままでいてくれる間は私が一番そばにいられるんだから」。これはカットされたエピソードだが、この背中合わせだけで代替として十分。
— パンナコッタ (@yuridake2018) 2018年11月10日
二人の会話が終わり、沙弥香さんは「左方向に」立ち去った。この「左方向」というのが重要な意味を持っているだが、それは後の場面との関わりの中で語るべきものなので、ここでは一旦置く。
— パンナコッタ (@yuridake2018) 2018年11月10日
そこからは沙弥香さんに示された「七年前の生徒会長」というヒントを頼りに侑さんが色々探るシークエンス。ここはアニメオリジナルの流れが多かったが、まあどこかしら長めにしないと原作10話だけでアニメ1話分は厳しいでしょう。個人的には、演出にサスペンスっぽさがあってちょっと面白かった。
— パンナコッタ (@yuridake2018) 2018年11月10日
ここであおき氏のコンテ力がまたしても輝く。「なんか横になってるカット」と同様、なんでそんなことしようと思いつけるの? というパターンだ。
— パンナコッタ (@yuridake2018) 2018年11月10日
七年前の生徒会長が「七海澪」であったことに辿り着き、その人が燈子さんの姉だと教師に聞かされる侑さん。この場面は基本的に二人が廊下で突っ立って喋ってるので、映像的に退屈なものになっても致し方ない。致し方ないはずなのに、アニメ『やが君』は決して妥協しない。
— パンナコッタ (@yuridake2018) 2018年11月10日
教師の所作に注目。侑さんとの会話の途中で、教師は眼鏡を外す。おそらく眼鏡拭きで拭いたのだろう。それだけなら間を保たせるよくある手法なんだけど、ここからが凄い。
— パンナコッタ (@yuridake2018) 2018年11月10日
眼鏡を拭き終えただろう教師は当然、眼鏡をかけ直すわけだが、この瞬間カメラは教師の主観視点にあった。そのため、横切るようにしてフレームの内側が画面を通り抜け、画面上は侑さんの顔が3つに分裂するw こんなの普通は思いつかないよ。
— パンナコッタ (@yuridake2018) 2018年11月10日
で、次に喋りたいポイントが先に触れた沙弥香さんの「左方向」と密接に関わってくる所で。完璧な燈子さんは決して彼女の全てではないのだという事実。そんな燈子さんに対しどうアクションを取れば良いのか、あるいは取るべきでないのか、侑さんは悩みながら歩く。
— パンナコッタ (@yuridake2018) 2018年11月10日
そこでぶつかる廊下の突き当り。侑さんは選択を迫られる。左(沙弥香さんと同じ道)と右(沙弥香さんとは別の道)、果たしてどちらに行くのか。その決断は、侑さんが一人でくださなければならない。そういう構図を示したロングショットだった。
— パンナコッタ (@yuridake2018) 2018年11月10日
高密度のAパートが終わっても、さらに高密度のBパートが待ち構えているのがアニメ『やがて君になる』。とはいえ今回のはさすがに高密度も度が過ぎるだろうというレベルで、これが現実に存在する映像なのか未だにちょっと自信がない。それくらいヤバいBパートだった。
— パンナコッタ (@yuridake2018) 2018年11月10日
Bパート、アニメ独自の要素として特に凄かったのが、椅子に乗って(お姉ちゃんの身長に合わせて)お姉ちゃんの制服に触れる昔の燈子さんと、現実にお姉ちゃんと同じ高校生になって自らが着る制服に触れる今の燈子さんのカット。ああそうか。お姉ちゃんになるなら当然今着ている制服もお下がりだよな。
— パンナコッタ (@yuridake2018) 2018年11月10日
下記ツイート訂正
現在→原作
これ、僕の記憶にある限り現在では描写されておらず、かつアニメでも明言はされていない要素なのがまた憎い。言葉だけでなく映像で提示する。そういう鋼の意思を感じる。
— パンナコッタ (@yuridake2018) 2018年11月10日
「私がお姉ちゃんの代わりになろうと思ったの」。そう語る燈子さんの姿は、直接でなく水面に映る像として画面にある。「みんなの前で特別でいることはやめられない」と言うのは、特別でない「ただの私に戻った」燈子さんなのだ、という構図。
— パンナコッタ (@yuridake2018) 2018年11月10日
「劇はやるよ」と言って燈子さんは侑さんから離れていく。同時にカメラもまた、侑さんを映しながら次第に後方へ。このままでは、物理的な面だけでなく、精神的な面でも二人の距離がひらきかねない。そんな描写かと。
— パンナコッタ (@yuridake2018) 2018年11月10日
それを悟った侑さんは燈子さんを追いかける。追いかけ、燈子さんの望むようにしようと語りかける。そうして二人の距離は再び縮まったかに見えたが、しかし侑さんの言ったことには嘘があるのだ……ということを示すのがデカデカと画面の真ん中に居座った柱=境界線か。
— パンナコッタ (@yuridake2018) 2018年11月10日
最後に、Cパート。ここでも境界線の演出が活きる。自分を慕う者からのラブレターを読むのは、お姉ちゃんの制服を脱いだただの燈子さん。その構図を、クローゼットの左側と右側の境界線で強調してみせている。
— パンナコッタ (@yuridake2018) 2018年11月10日
スレッド機能はどうやら25連投が限界のようなので、改めて続きを、ちょっとだけ。今回のエピソードは、言うまでもなく原作6巻とセットになることでさらにその価値を高めることになる。
— パンナコッタ (@yuridake2018) 2018年11月10日
もし、2期があってそこもアニメ化されるようなことになれば、当然コンテ担当はあおきえい氏であってほしい。その点だけ付け加えて、今回の感想はひとまずしめたいと思う。いやー本当に凄かった。今年ベスト級のエピソード。
— パンナコッタ (@yuridake2018) 2018年11月10日