百合とお菓子と

パンナコッタ(@yuridake2018)の百合ブログです

『スローループ』の紹介とか感想とか 全百合のオタクにおすすめしたい作品

今、日常系×趣味をテーマとする作品が波にのっている。キャンプをテーマとした『ゆるキャン△』が、ちょうど一年ほど前にスマッシュヒットをとばしたことは記憶に新しい。また『ヤマノススメ』も3期が放送され、僕の観測範囲内では1期2期以上の盛り上がりを見せていたように思う。

そんな人気ジャンルに、新たに一つの作品が加わった。うちのまいこ氏『スローループ』である。連載誌はきららフォワードだ。

 

スローループ (1) (まんがタイムKR フォワードコミックス)

スローループ (1) (まんがタイムKR フォワードコミックス)

 

 

表紙を見れば一目瞭然だが、本作のテーマは釣りだ。釣りのことなんか分かんねえな……という向きもあるとは思うが問題はない。釣り知識の解説はきちんとしてくれているし、そしてこれが何より大切なことだが、解説パートが劇の進行に不自然さを与えていない。かくいう僕も釣り知識には乏しく、この作劇の上手さには随分助けられたクチだ。

だからみんな安心して『スローループ』を読もう! と記事を締めくくるのは簡単だろう。とはいえ、それだと僕としても不完全燃焼感は否めないので、ここからは多少のネタバレも交えて本作の見所を書いていこうと思う。ネタバレなんて絶対許さないぞ、という向きは僕のブログは読まなくて良いので『スローループ』を読んでください。

 

見所① 亡き父から教わった釣りが繋ぐ義理の姉妹の関係

本作の核となるのは、互いの親の再婚により義理の姉妹となった小春とひよりの関係性である。二人は最初から順風満帆な仲良し姉妹ライフを送る……ことはできず、表面上は普通に接していながらもぎこちなさが抜けきらない。胸の内の葛藤や、相手への配慮。そういったものが、二人を元の赤の他人のままに留めていた。

そこで二人を繋ぐのが、釣りという趣味でありテーマだ。釣りを介してコミュニケーションを取り、互いを受け入れ、胸の内を明かしていく。その様子が大変微笑ましい。

ここで重要なのは、釣りがひよりの亡き父から受け継がれた趣味である点だ。新しい家族ができ、それを受け入れてなお、過去確かに存在した家族の形は失われない。ひよりの悩みが変化に対する戸惑いであったことを踏まえれば、釣りがこのような形で機能することは自然であり、また大きな意義も内包している。

 

見所② 一見して誰とでもすぐ仲良くなれる系だが実は不器用な小春ちゃん

明るく元気で好奇心も旺盛。晴れてひよりの姉となった小春の性格は、おそらくそういった言葉で表現できるだろう。3月の海に飛び込もうとしたあたりから、それは明白だ。

そんな小春のことだから新しい家族ともすぐに100%打ち解けるのだろう。そう思っていたが、実際には前述の通りとなった。ひよりに対してそうなのだから、新しい母親に対しては言うまでもない。同じ家にいることに気まずさも感じている。

しかし、小春は不器用なだけではない。不器用ながらも状況をポジティブに受け入れ、無理せず徐々に改善していこうする。そういう強さを、小春は持っているのだ。「あなたは…うちの母親と気まずかったり…するの?」とひよりに尋ねられた時に、「まーちょっとは!」と元気に笑顔で答えてみせたことはその象徴だろう。その瞬間の笑顔は、強さは、小春が不器用であるが故に際立っていた。

 

見所③ 幼馴染みに踏み込めなかった恋ちゃん

本作にはもう一人の主要人物がいる。ひよりの幼馴染みである恋である。幼馴染みなのだから、恋は当然にひよりの父が亡くなった時とその後のことを知っていて。そして知っているからこそ、きっと落ち込んでいるだろうひよりに踏み込むことはできなかった。そのことに対する後悔が、小春という存在によって膨れ上がっていく様子は見ていてこちらが辛くなるほどだ。

しかし、恋の良いところはその後悔を他人、特に小春への嫌悪や怒りに変換しない所だ。むしろ小春を素直に認め、その上で二人を微笑ましく見守るという新しい役割までちゃんと見つけてしまうのだから凄い。恋ちゃんマジ良い子。

 

 

僕が思う『スローループ』の見所は主にこの三点である。想定していたより長い記事になったが、単行本が1巻しか出ていない段階でもそれだけ語れるくらい良い作品ですよということで。打切りだけは避けてほしいので、ほんとみんな読んでください。『スローループ』をよろしくお願いします。